麻と絹と皇室 ー神話から紡がれる二つの布の物語ー

麻と絹と皇室 ー神話から紡がれる二つの布の物語ー

前回は、世界遺産にも登録されている富岡製糸場について触れました。

 

 

今回はさらに時をさかのぼり、日本人と切っても切れない「絹」と「麻」、そして皇室にまつわるお話をしてみたいと思います。


この記事で分かること

  • 大嘗祭(だいじょうさい)とは何か
  • 麁服(あらたえ)と繪服(にぎたえ)の違いと役割
  • どこで作られているのか
  • 神話から現代まで続く“祈り”の意味
  • 日本文化を未来につなぐために大切なこと

 

「千年以上、同じ土地で、同じ家が織り続けてきた伝統的な布」

 

そう聞いて、どんな布を思い浮かべますか?

 

それは新しい天皇が即位する際に一度だけ行われる、日本最古の神事 大嘗祭(だいじょうさい) で必ず用いられる特別な布。

 

大嘗祭とは、皇居・東御苑で夜を徹して行われる厳かな儀式。

 

新天皇が神々に新穀を捧げ、国家の安泰と五穀豊穣を祈る──奈良時代以前から続く、その神秘的な儀式に欠かせないのが、麻と絹で織られた二つの布。

 

それを

繪服(にぎたえ)と麁服(あらたえ)といいます。

 

麁服と繪服とは?

麁服(あらたえ)…大麻で織られた布

徳島県の三木家が代々受け継ぎ、忌部神社の巫女が機織りを行い、宮中へ納められてきました。

繪服(にぎたえ)…絹で織られた布

愛知県豊田の糸を京都で織り上げ、皇室へと届けられます。

 

驚くべきは、千年以上にわたり、同じ土地・同じ家が布を織り続けているということ。

(南北朝の動乱期のみ例外)


これはまさに「奇跡の文化継承」と言えるでしょう。

 

 

神話にまでさかのぼる起源

天照大神と素戔嗚尊の誓約(うけい)のあと、暴走した素戔嗚尊は高天原を追放され、地上に降り立つ途中で大宜都比売(おおげつひめ)に出会います。

 

大宜都比売は、自らの体から食べ物を取り出し、心を込めて素戔嗚尊をもてなしました。

 

しかしそれをを「穢れ」と見た素戔嗚尊は彼女の命を絶ってしまいます。

 


すると、その亡骸から稲・麦・豆・蚕・桑の葉が生まれた。これが「五穀豊穣」と「養蚕」の起源とされる神話です。


 

のちに大宜都比売は 豊受大神 として祀られ、伊勢神宮・外宮に鎮座しました。稲作とともに絹織物の基盤を与えた神であり、繪服(絹の布)の精神的な起源はここにあります。


 

また、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天孫降臨の際に身につけていたのが、大麻で織られた布、麁服でした。

 

 

つまり大嘗祭とは、この「天孫降臨の再現」であり、新天皇が天照大神と一体となり国の安寧を祈る儀式。


 

繪服と麁服を作り続け、奉納し続けてきた人達がいるということは、それが神話から現代へと途切れることなく行われ続けてきたという証でもあるのです。

 

 日本人を支えてきた麻と絹

麻…衣服、縄、漁網、神社の注連縄、種からは食用や油、茎からは紙、建材、医療など

絹…衣や、婚礼衣装、楽器の弦や縫合糸、寝具、交易品として国の経済を支えるなど

 

このように、麻と絹は神事に使われるだけでなく、日本人の暮らしを支え続けてきました。

 

しかし現代の私たちは、自然素材をまとうことから離れ、麻や絹に宿る力や意味を忘れかけています。

 

また戦後、麻は栽培を禁止され、絹も海外から輸入するような施策に変わっていきました。

 

同時に、日本の歴史を学校で教えられることも禁止され、今年で80年が経とうとしています。

 

 

日本はいつ建国されたのか?

日本を建国した人は誰か?

 

 

これに答えられる高校生はわずか3%だそうです。


 

イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビーはこう断言しています。


「自国の神話や歴史を学ばなくなった民族は、例外なく100年以内に滅びる」

 

昨今の世界情勢や日本の政治を見ていると、あと20年ももたないのではないかと言う人もいるほどに、『日本を想う心』が薄れてきているのでは?と感じます。

 

日本という国が2685年続き、麁服と繪服が千年以上も受け継がれてきたのは、形を守るだけでなく、そこに宿る祈りや想いを継承してきたから。

 

 

今こそ、日本の歴史に光を当て、我が国の未来を考える時なのではないでしょうか?

 

 

麻やシルクに触れる機会があったら、ぜひこの記事を思い出してみてください。

 

 

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